【其の六十二】チコちゃん

昔、ある政党組織の委員会の話を聞く機会があった。一通り聞いたあと、質疑応答の時間が取られた。

 

私はこう質問したのを覚えている。

NHKはチコちゃんのようなバラエティをすべて廃止すべきではないですか?バラエティは民放に任せて、報道に徹するべきです。芸能人を大量に出すことは税金の無駄遣いです。」

 

すると、1人の委員が答えてくれた。

「いや、NHKのバラエティは教養に富んでいてとても面白いよ。僕の子供もチコちゃん大好きだし」

 

そうなのか?疑わしい。

頭にモヤを抱えながら帰路に着いたあの日。

 

あれから、一年ほどが経っただろうか。

私はいま、録画したチコちゃんの放送を見てる。

確かに民放には無い良さがあるな。

今ならあの人の言っていたこともわかる。

 

まだ白紙の卒論と就活準備を尻目に、テレビを眺めながらそう思った。

「ぼーっと、生きてんじゃねーよ!」

バイト馴染めるかチャレンジ③

飲食業を辞めた私はガソリンスタンドで勤務することとなった。

というより、すでに勤務を行なっている。

冬に似つかわしくない暑さに、精神を疲弊しながら、私は新境地へ達したのだ。

 

飲食業よさらば!

 

新天地で何ヶ月進むのか、私よ。

一言だけ自戒しておきたい。

新幹線になろうとしなくて良い、特急でなくてもいい、普通電車でも急行でなくていい。

各駅停車でいいのだ。

ただ、途中下車はしてはならない。

各駅停車のお前は、途中下車の誘惑に駆られやすい筈。

 

まず自分が各駅停車であることを認めなければならない。

バイト馴染めるかチャレンジ②

木曜日、金曜日、土曜日、日曜日、仕事を終えた私の心は、もはや嫌悪に傾くしかなかった。

 

月曜、火曜、水曜の貴重な休日。しかし、私の心は満たされない。腹を寄生虫がつつく。

私の心は木曜日、要するに次のバイトに、この三日間囚われていた。

 

もう限界だ。物言わぬ屍になろうとも、せめてゾンビと化してやろうではないか。

 

私は店長に辞めるとの連絡を送った。

それが深夜2時、現在深夜4時。

起きたら店長は私に連絡を寄越すだろうか。

バイトを始めて1ヶ月も経たず辞める私は、蝶のようにこの街をうろつく。

次の蜜はどこにあるのだろう。

 

バイト馴染めるかチャレンジ①

現在、私は人生初飲食店でのバイトを始めて3日目を終えた。

 

馴染めないのは仕事先のせいかと毎回考えていたが、行く先行く先で、常に馴染めないのはもしかして自分が人を引き寄せない何かを持っているのではないかと考えたくなる。

 

そんななか優しそうな先輩が飲み物を奢ってくれた。これだよこれ、俺はこういう人になりたかったんだ。その先輩は皆んなに好かれる人だった。かっこいい。輪に入れない俺を心配してくれた。仕事の覚えが悪くても大丈夫だと励ましてくれた。

 

まだ続けます。辞めません。

【其の六十一】都合のいい正義

ゴミ屋敷と化している現在の我が家でぽつんと1人考えた。

悪を生み出すのは、環境であると。

 

悪になりたくて悪になったものなどごく僅かなもので、悪に染まるほかなかったものが多勢なのではないだろうか。

 

貧困、孤立した人間関係、社会の虚空、これらが積み重なったとき、人は悪への門を叩く。

そんなこともつゆ知らず、正義を買って出て、悪を叩く者は、想像力の欠落を思わずにいられない。

YouTubeのコメント欄に沢山見受けられる。

 

真の正義は根元まで追及し、再発を防ぐことだ。自己満の正義は根っこから栄養を吸収できずに朽ちる。

【其の六十】求めてたもの

一人暮らしを始めてから、精神状態は下降線を辿る一方である。

 

バイト先では馴染めないまま辞めることになったし、凡庸な食事には不快感を覚えるし、洗面台は公衆トイレ並み、部屋は狭くて汚い。

 

でも、これが私の求めていたものであるのかもしれない。自分が恵まれた環境に置かれていたことを生肌で確認できたのはとてもよいことだ。

 

思いやりとは想像力だ。

だから苦しみを知る必要がある。

【其の五十九】判断基準

自分を理解しようとするときに、外部組織に判断基準を委ねてしまう傾向がある。

バイト先での評価を自分の価値に転換してしまったり。

 

しかし、これには問題があるのではないか。

共同体によって価値観というのは異なるのだから。

共同体の価値観に寄せるというのも、社会的動物の人間としては大切だと思うが、それを自己そのものにしてはならないと思う。

また、価値観が合わないのを自分のせいにしてはならないし、他人のせいにしてもならない。

ただ価値観が合わないだけなのだ。

 

様々な共同体に属することで、自分の破片を掻き集めるというのが良いのかもしれない。