【其の五十八】機械化
バイト先、私は機械と化す。
動く機械、人間である必要はない。
コストパフォーマンスがいいだけ。
協調性を持たない私は、透明人間である。
一匹狼ではない。もはや一つの機械である。
自分がバイト先を辞めても、雨が降り、雷が落ちれば、みんなは私を忘れるだろう。
社会が憎いならば狼煙を上げようではないか。
孤独な者の復讐劇が幕を開ける。
【其の五十七】底の見えない恐怖
精神を安定することは難しいことなのだと、この歳になって気づいた。
今日は牛丼屋に行ったのだが、
牛丼の並を初めて残した。味噌汁も残した。
頑張って食べようとしたが、手が震え、床に米粒を落としてしまった。
残飯がバレぬよう食器を返却した。「ごちそうさま」を言わず、調理場から背を向けた。
1人の客が怪訝そうな顔で、私を見たが、意識過剰かもしれない。
変に生ぬるい気候が続く今、目をしぼめ、私は中途半端に開いたカーテンの隙間から、何も干されぬ物干し竿を見つめる。間接視野に映る青空。
なんだがとても実家が恋しくなってしまった。
【其の五十六】虫の境界線
家に現れる虫はどこまでが許容範囲か。
歳をとるにつれて範囲が狭まっている。
昨日、バッタが家に現れた。
昔であれば、喜んでバッタを捕まえにいったのだが、今の私にはそのような余裕がない。
一応、家から逃してやろうと思ったが、
思わぬ跳躍力に腰が引け、見失った。
大きくなって見つかるまで待つしかない。
【其の五十五】金の難しさ
節約を心がけている私。
たとえば、カレーレトルトは100円、150円、200円と価格帯が分かれているのだが、
私は100円のを中心に買うようにしている。
100円のは水っぽさが強く、
まぁ食べれるが美味しいとは言い難い。
逆に200円のを一度だけ食べた時は、
カレー本来のコクというのを存分に味わうことができ、とても美味であった。
しかしこのような地道な努力をしようとも、私はそれを不意にしてしまうほど、大きな金を使ってしまう。
例えばテレビの処分。
引越し前に処分を要請していなかったせいで、自分で捨てる必要を迫られ、大した額じゃないだろと踏んでいたら、正規な店であるのに4000円ほど取られた。
ちなみに今現在も自転車の空気を入れようとしたら全部抜けてしまい、タクシーに乗っている。4、5千円は掛かる見込みだ。
【其の五十四】一安心できない自己暗示
心を休めるために大丈夫、大丈夫、と
自らに言い聞かせようとするが、
それで一安心できないのが私だ。
大丈夫ではないと、自己暗示に縛られている。
おしり!おしり!おしり!おしり!おしり!
(一安心と自己暗示で韻を踏みたかっただけ)
【其の五十三】まさかの
階段を昇ると、黒い塊が端で体を縮小させ、今にも爆発して飛びかかりそうな雰囲気を漂わせている。
ごっきーか?
ちがった、これは珍しい。
すごいな多摩地方。