【其の五十七】底の見えない恐怖

精神を安定することは難しいことなのだと、この歳になって気づいた。

 

今日は牛丼屋に行ったのだが、

牛丼の並を初めて残した。味噌汁も残した。

頑張って食べようとしたが、手が震え、床に米粒を落としてしまった。

残飯がバレぬよう食器を返却した。「ごちそうさま」を言わず、調理場から背を向けた。

1人の客が怪訝そうな顔で、私を見たが、意識過剰かもしれない。

 

変に生ぬるい気候が続く今、目をしぼめ、私は中途半端に開いたカーテンの隙間から、何も干されぬ物干し竿を見つめる。間接視野に映る青空。

なんだがとても実家が恋しくなってしまった。