【其の十六】血肉湧く

現在一人暮らしをする私にとって最大の問題点がフライパンの使い方がわからないということだ。

 

調べればわかるのだろうが、わかったところでよし調理しようとはならないと思う。

そもそも包丁で何かを捌いたこともまだない。

 

そう、自炊によるサラダや肉を私は食べられないのだ。

 

サラダはまだスーパーで購入したもやしで代用できるが、調理済みの肉はスーパーで買うとお高くつく。

 

なので、肉が食えない。

我慢できないときは駅前の牛丼屋に駆け込むが痛い出費であり、避けたい。

 

そんなとき、国の御母さんから吉野家のレンジでチンできる牛丼の具を貰った。

 

肉に飢えた私はそれをレンジで解凍する。

ほかほかのご飯に降り注がれた豚肉は私に生の喜びを教えてくれる。

 

うめええええええええええええええ。

 

私はソファの上で狂乱する。

 

米の上に光り輝く豚肉のように。

【其の十四】風呂ガチャ

引っ越したばかりのときは二、三日に一回入れば構わないと考えていた風呂であったが、最近は毎日のように入っている。

 

そこで一つ困ったことがある。

風呂の温度が全くもって予想できないことだ。

 

実家の風呂は温度を設定すると、自動的にお湯が出力されていた。

だが、私の今の家は自分でお湯と水の比率を調整する必要がある。

 

蛇口から出す際に、自分の手で温度を確認し、「これ如何に」と溜まった風呂に入るのだが、どうも自分の予想した通りの温かさが得られることは少ない。

 

風呂後も寒くて震えているという謎の事態が発生している。

 

今日はどんな温度になるだろう。

【其の十ニ】栄養素レンジャー

栄養というのはただがむしゃらに栄養がありそうなのを食えばいいというわけではないらしい。

 

赤、緑、白、黄、黒の五色の食材を取る必要があるらしいのだ。

 

赤色食材の肉など全然食べていなかった。

 

どうりで卵、納豆、もやしといった栄養素の高い食品ばかり食べても体がふらつくわけだ。

 

そろそろコンロを使った料理も考えないといけないのかもしれない。

 

しんどいわね。

【其の十一】嫌悪感の正体

寂しさを埋めるためにショッピングチャンネルを点けていた俺。

 

低俗な番組のため、脳が情報として認識しないはずであった。

 

だが、私は異変に襲われる。

一人暮らしの疲れかわからないが、脳がショッピングチャンネルの情報をスキャンしているのだ。

 

うわああああああああ。

やめてくれえええええええ。

 

出演者のオーバーさ嘘くささ。

 

ふいに、嫌われないためクラスで偽りの感情を演じていた自分を思い出した。

 

俺がショッピングチャンネルを嫌っていた理由はこれだったのか。

 

ショッピングチャンネルへの嫌悪は、

過去の自分への嫌悪であった。

【其の十】24hマスク

家が汚く、普通に生活しているだけで喉を痛めてしまう。

 

なので私は家でもマスクを着用する。

 

目の前にかさばるゴミのせいだとはわかっているのだが、ゴミというのは捨ててもまた新たに現れるので捨てる意味がない。

 

外にはウイルスに花粉。

内にはゴミ。

 

詰みです。