【其の四十五】とある就活生との邂逅
一年生の夏、自己啓発本を読み漁り、できる大人になることを目標としていた私は、某新聞社の1dayインターンシップを訪れた。
照明まばゆい会場の雰囲気に気圧されながらも、講演者の話を興味深く拝聴していた。
なんとしても、この会社に入りたい。
そのような想いが昂ったあと、隣の人と好きな記事を発表しあうという課題が組まれた。
社会情勢にうとかった私は(今でもうとい)、隣の人に支離滅裂な発表をした。
しかし、そんな私の話を笑わずに真剣に耳を傾けてくれた。
聞けば、この方は早稲田の3年生らしく、私が趣味紹介の一環で、巨人軍のファンだと伝えると、こないだ報知のインターンで練習の取材を行ったと教えてくれた。
旅をすることが好きだとも教えてくれた。
私はただただ圧倒された。
こういう人が就活に強いのだなと。
私もこうなりたいと願った。
なので、思い切って尋ねてみた。
「就活のためには学生生活何をすればいいですかね?」
私はそこでの答えに取り組めば、この人のようになれるだろうと考えた。
自己啓発本のように答えをくれるものだと。
だが、そこでの答えは当時の私には意外なものであった。
「就活のために何かをやるという意識は持たないほうがいい。いろいろなことを経験することで、それがやがて人生の糧になり、就活にも結果的に活きるようになる。」
思えば、私が自己啓発本を読まなくなったのはこの頃であった。
一つの答えへ向かい一直線へ進む人生でなく、答えを複数出す人生を歩もうとする決意を胸に抱いた夏であった。